「高齢化社会に対応する すし業のあり方」  −渡辺英幸 基調講演 −
日本料飲社交連合新聞 2000年4月5日号 掲載



◆高齢化社会対応の保険制度の施行-

 日本の社会保障制度は医療保険、年金保険、雇用保険、労災保険、そしてこの4月から5番目の社会保険として介護保険が仲間入りした。
この保険の特徴は保険給付に上限があり、65歳以上の人には応分の負担がある。40歳から65歳未満の人の場合は、動労者の場合、事業主が保険料の半額を負担する。
自営業者の場合は税金で半額が補助される。また年金生活者の方が、現役世代より負担が大きい。


◆マーケットとしてのシルバー産業−
 
 これはだいぶ前から言われたことだが、昨年までで65歳以上 の高齢者の数が2100万人を超え、16.7%になる。
2010年には、日本は世界でイの1番に高齢社会を迎え、5人に1人が高齢者に。
2025年には3200万人という。
 要介護高齢者の数は、現在は280万人で高齢者対比では13.3%に当たるが、これが2025年には520万人と推定され、高齢者対比では16.25%を占める。
もちろん高齢者が即要介護者ではなく、介護の必要がなく、働く、仕事に携わる人が84%弱はある。
 高齢者を対象としたシルバー産業のマーケットは、97年には28兆6千億円で、全消費市場の18%を占めた。
これが2010年には43兆円で、全消費支出の25%を占める。
単純にシルバーは金持ち、また逆にお金のない層というのも間違い。
 要介護マーケットは98年度は推定合計で3兆6200億円。
2010年には7兆円になるという。
 高齢者福祉マーケットとしては、福祉用具・福祉サービス用機器/高齢者配慮デザインの住宅・機器.用品/介護用・介護支援用情報システム/介護ビジネス支援サービス/健常者高福祉製品/健常者用サービス/高齢者就業・活用ビジネスーなどが考えられる。
 介護サービスの種類としては、在宅入浴・在宅介護・デイサービス(1日のみ)・ヘルパー・送迎サービス(福祉タクシー)・生活支援サービス(食事、洗濯、清掃等で、食事の場合は食べさせてあげる)。


◆シルバー産業の特徴−

 シルバー産業は、人生熟年の福祉産業であり、市場の創出につながる。
また民間の手になるので官的な押し着せはない。
 福祉とは人生のしあわせを得ること。
シルバー産業は、健常高齢者と要介護者に、しあわせを送る産業といえる。
シルバー産業は、業際事業の集積、提携することで活路がある。
すし業でいえば、鮨は高齢者には最適な食べものといえる。
 そしてシルバー産業は、初期の押し着せから、選択する時代に入ることにより、市場競争の対象となる。
そして顧客満足度ということで競争原理が働く。
 また、高齢者・要介護者の福祉に係わる人達など、雇用の創造につながる。
有資格者をはじめ、家族、ボランティア、市民、政・財・官そして事業家と、シルバー産業はシルバーの方々の福祉を提供するために仕事に就く人たちの集合場なのである。


◆すし店経営の場で考えよう−

 いままでのすし店経営は、馴れずし、押しずし、握りずしなど製法技術による商品開発が主流で、高齢者を意識したものではなかった。
素材による商品開発にしても、女性などを消費者として考慮したもので、マグロのヅケ、いくら・うになどの軍艦巻き、のりの手巻きずし、野菜の手巻きずしなどがある。
 一方、業態による店舗開発では、屋台すし、座敷すし、立ちすし、出前・仕出し、お持ち帰りすし、回転すしなどだが、高齢者だけを対象にしたものではない。
客筋、客層により超高級店からファミリーレストランタイプの店までさまざまだが、シルバー客はといえば、ファミリーレストランタイプに括られていた。
 販売対象として客を見ると、ペア客、女性客、団塊の世代の客、熟年(シルバー)の世代と分けられるが、このうちシルバー世代の、ことに女性は殆ど手をつけられていなかった。まさにこれからの市場といえるだろう。
現に、美味しいという情報が入ると、シルバー女性客は、いま新幹線を使ってまですしを食べに行くという時代になった。


◆高齢者福祉時代とすし店経営−

 すし屋ほど、食の生活の中で高齢者に喜ばれる商売はない。
まさにシルバー市場の形成はビジネスチャンスといえるだろう。
 高齢者要介護者へのすしを提供するためにはすしの技術・素材・業態・販促の全てをシルバーを対象に再構築することが必要だし、これは自分の店だけでは出来ず、「組合」の出番等が考えられる。
 それには高齢者・要介護者の関係者との提携が必要になる。
加齢者にとってすしほど食べたいものはないのである。

(1)「居宅療養管理指導」を行う保険調剤薬局/「居宅介護住宅改修」を行う工務店や設計事務所/法人格をもつ家政婦紹介所/福祉用具貸与業者/配食サービス/緊急通報システム/宅配サービス/移送サービス/福祉機関への贈り物としての「すし券」を販売。
高齢者は地域重視の生活になるから、そこからすし券と地元商店街組合との結び付きがでてくる。
 65歳以上の人口が増え、一方で少子化が進む。
若い人と高齢者との出合いの場にすしが介添する。
そこに組合の果たす役割がある。
(2)インターネットの活用(各家庭、職場などの電話と違い、携帯電話を使うことによって可能)。
健康食としてのすしメニューの提案/高齢者向きの店舗情報の提案/ネットワークを活用したケータリング
(3)脱サラすし店経営の勧め(調理技術の講習/経営管理の講習)
(4)脱サラすし調理師の勧め
(5)脱サラすしエージェントの勧め
(6)給食調理師にすし調理の指導
(7)すし食材の提供
これらは組合としてまた個店でもやれるが、他組合、そして異業種と組むことも充分考えられる。


◆シルバー客に喜ばれるすし店−

(思いやりのある店、流動客を定着型にもっていく)

(1)店舗づくり
段差がない/椅子が安定している/照明が明るい/腰掛式トイレがある/手すりがある−など。
(2)提供する商品
食べやすく加工してくれる/好き嫌いを受け入れてくれる/定食の中身を好みで入れ替えてくれる/季節に応じたネタを提供してくれる。
(3)サービス
高齢者を歓迎してくれる/気持の上で健常者と同じ扱いをしてくれる/常に気をつかってくれる/同伴者にも気をつかってくれる/老眼鏡が置いてある/若い人が高齢者と一緒にこられる店/年寄り扱いはしないが敬老精神がある-など。



講演する渡辺代表

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