<日本実業出版社 「企業実務」2000年12月号 P67 掲載>


 携帯電話やEメールはビジネスにもメリットは大きいが、野放しにしておけば、通信費増大などの問題を抱えることになる。使用管理にかかわるモデル規程を示すとともに、各社で実際に運用されている規程を紹介する。

携帯電話編
(株)会社業務研究所 客員研究員
藤永伸一
電子メール編
中小企業インターネット協議会事務局 次長
須賀明良

 
携帯電話・Eメールの使用管理規定モデル例


   (携帯電話の管理規定)
 私用電話の禁止など遵守すべきルールをまとめる

 会社が貸与した携帯電話は、社外での使用も多く、常に利用状況(私用など)は監視できません。少ない台数ならまだしも、貸与する携帯電話が多くなり通信費が膨らんでくれば、これを放置しておくことはできません。また、マナーが悪ければ周囲も迷惑だし、会社のイメージに傷がつきます。
 こうしたことを防止するには、携帯電話の貸与と使用方法に関するルールづくりが必要です。


●携帯電話規定作成のポイント

 右のモデル1を見ながら、携帯電話管理規定の作成ポイントを押さえていきましょう。


(1) 主管部門(第2条)・貸与の申請手続き(第4条)

 まず、携帯電話を全社的に管理する必要があるので、その主管部門に関する定めをしておきます。一般的には、総務部門が担うことになるでしょう。また、貸与の申請方法も定めておきます。



(2) 遵守事項(第6条)

 野放図な使用にならないよう、使用に当たってのマナーや、どのような場合に使用を認めるのかなど守るべき事項を定めます。



(3) ルールに違反した場合の措置(第11・12条)

 規定を守ってもらうためには、違反した場合の措置についても定めが必要でしょう。そのほか、業務利用を認める対象者の範囲であるとか、携帯電話が壊れたり紛失したりした場合の取扱いについても規定しておくとよいでしょう。
 さらに、個人の携帯電話を業務に使っている場合、その取扱いも定めておくべきです。その際、一番大きな問題になるのは、通話料の負担をどのようにするかということでしょう。実際の使用量に合わせて会社が負担したり、一定額を手当てとして支給するなど、自社に合った方法を定めます。

●社員所有の携帯電話を利用する場合の扱い
第1条 (許可基準)
 本人所有の携帯電話を業務に利用することができるのは、次に掲げる条件を満たし、かつ会社に申請して許可された者とする。
(1) 社外で遂行する業務に従事する場合
(2) 携帯電話の使用により業務を効率的に遂行することができる場合
第2条 (通話料の負担)
 本人所有の携帯電話を業務に利用することを認められた社員は、業務利用に要した通話料を会社に請求することができる。
 通話料の請求は所定の手続きにより行ない、利用明細書を添付する。
第3条 (携帯電話の紛失等に関する会社の責任)
 会社は、社員の過失や不注意による携帯電話の紛失・故障の損害に対して責任を負わない。
   
モデル1 携帯電話の管理規程
第1条 (目的)
 この規程は会社名義で契約した携帯電話を社員に貸与する場合の取扱いについて定めたものであり、携帯電話の効率的な利用を図ることを目的とする。
第2条 (主管部門)
 会社が社員に貸与する携帯電話の管理は、総務部門が行なう。
第3条 (貸与)
 業務のうえで携帯電話を使用することが必要な社員は、会社に申し出ることによって携帯電話の貸与を受けることができる。
第4条 (貸与の申請手続き)
 携帯電話の貸与を受けようとする社員は、所定の用紙に必要事項を記載のうえ所属長に申請するものとする。
 申請を受けた所属長は、申請内容を検討のうえ必要があると認めた場合は総務部門に対して貸与申請の手続きをとる。
第5条 (審査)
 所属長からの申請を受けた総務部門長は申請内容の審査を行なう。
 審査の結果、貸与することを認めた場合は迅速に貸与手続きを取る。
第6条 (遵守事項)
 携帯電話の貸与を受けた社員は、次に掲げる事項を守らなければならない。
(1) 使用に当たって周囲に迷惑をかけないこと
(2) 商談中や会議中および自動車運転中は、電源を切っておくこと
第7条 (私用の禁止)
 携帯電話を私用に使うことは禁止する。
第8条 (通話記録の確認)
 会社は、必要に応じて貸与した携帯電話の通話記録を確認することができる。
 前項の確認により、私用が認められた場合には、その通話料を返還させる。
第9条 (破損および紛失への対応)
 貸与された携帯電話を破損・紛失した場合、使用者は直ちに会社に報告しなければならない。
 前項の報告を怠り会社に損害を与えた場合その損害を賠償させることがある。
第10条 (返還)
 業務上で携帯電話が必要なくなった場合、返還しなければならない。
 返還の際は所定の用紙に必要事項を記載のうえ総務部門に提出する。
第11条 (貸与の中止)
 この規程に違反した使い方をした場合、その他会社が必要と認めた場合は、携帯電話の貸与を中止する。
第12条 (懲戒)
 この規程に違反し会社に損害を与えた場合、就業規則の定めに基づいて懲戒することがある。
付則 この規程は、平成12年12月1日から施行する。




   (Eメールの管理規定)
 セキュリティや著作権への配慮も大切

  電子メールは、業務外利用による能率や職場のモラルの低下、コンピュータウイルスの蔓延や機密情報の漏洩などいくつか問題が懸念されます。社内で利用する電子メールにはルールが必要です。
 作成のポイントは、まず、使用における一般的なルール(使用基準)をつくり、そのうえで自社として何に気をつけ、何を重点的に管理していくかを明確にすることです。モデル2に沿って主な条文の意味とポイントを解説します。


(1) 遵守事項(第4条)
 社内における電子メールの使用について、ユーザーの一般的なモラルを確認します。ポイントは、会社はその権限によって個々の社員のメールを閲覧することができる、という項目を盛り込むことです。これで、電子メールの使用は業務の一環であることを社員にはっきりと認識させます。

(2) システムの保全(第5条)
 社内電子メールや電子メールシステム、その他回線で接続されている各種コンピュータのシステムや、そのデータの保護のための条文です。不用意な同報送信はメールサーバーに過度な負担をかけますし、システム障害の原因にもなりかねません。

(3) ウイルス対策(第6条)
 前項と関連しますが、特に注意を要しますので別項目にします。

(4) 社内機密情報の取扱い(第7条)
 就業規則や社内の情報管理規定などと連動させて管理します。「個人情報保護基本法」が施行されると、顧客情報などの個人情報が社員を通じて漏洩した場合に、それを管理している企業そのものの責任が問われます。機密情報の取扱いには、教育・啓蒙の機会を増やしたり罰則を強化するなど、充分な対応が必要です。

(5) 著作権(第8条)
 著作権の侵害も大きな企業リスクの一つです。たとえば、ホームページからダウンロードしたコンテンツを電子メールで知人などに送った場合、著作権者がもつ公衆送信権(著作権法二三条)の侵害に当たることがあります。
 「公衆送信」とは、公衆によって直接受信されることを目的として無線・有線電気通信の送信を行なうことです。「公衆」とは、一般に不特定な人を指すと解釈されますが、特定された数名とのやりとりであっても、両者間に何らかの金銭的な取引が成立すれば、デジタルコンテンツを盗んで販売したことになりますし、購入者がそれを何かに使用すれば著作権法違反です。

(6) 罰則(第9条)
 それぞれの行為にどのような罰則規定を設けるかは、頭の痛いところです。重大な犯罪につながる行為(機密情報の漏洩等)、重大な損害をもたらす行為(ウイルスチェックをしない等の過失)、単なる違反(私用メールを出した)などによって罰則のレベルを分けることが肝要です。

●規定作成・運用の際の注意点
 管理者側として一律に取り締まる際に注意すべき点は、受発信する電子メールが本当に私用メールかどうかという判断基準をどこに設定するかということです。
 たとえばある営業マンが、飲み屋で仕事のことを話題にし、興味をもってくれた人に名刺を渡したところ、後日その人から「今度、お酒を飲みに行きましょう」と電子メールが届く場合もあります。
 これは、プライベートなメールですが、今後の仕事につながるかもしれません。
 どこかで公私の線を引かねばなりませんが、適用する部署の仕事上の性質などを考慮して規定を作成するよう心掛けてください。
 
モデル2 電子メールの管理規程
第1条 (目的)
 この規程は、社内電子メールおよび電子メールシステム、その他回線で接続されている各種コンピュータシステムおよびデータの保護を行なうとともに、社内機密情報の漏洩を防止するために遵守すべき事項を定めることを目的とする。
第2条 (定義)
 この規程で使用する用語は、以下のとおり定義する。
電子メール:社内の電子メールシステムを介してインターネットメールとして外部のメールシステムへ接続するメールのことをいう。
第3条 (適用範囲)
 この規程は、外部ネットワークへの接続および電子メールでの社内外との情報交換について適用する。
第4条 (遵守事項)
 当社のシステムを利用し、当社の電子メールアドレスで送受信するときは、業務目的以外で使用してはならない。
 電子メールの内容は社会的な観点から判断して、倫理観・道徳観に反してはならない。
 各自で使用する電子メールの内容について、セキュリティ上の理由など、会社が必要と認めた場合には、本人の許可なく会社はその内容を閲覧することができる。
 職場において他者管理のパソコンを無断で使用して、他者の電子メールアドレスでメールを送受信してはならない。
 チェーンメールは、発信もしくは転送してはならない。
第5条 (システムの保全)
 社内電子メールシステムに支障が生じる危険性があるため、同時に不特定多数の人に同じ電子メールを送付してはならない。
  電子メール送受信の際、何らかのシステム障害が生じた場合は速やかにシステム管理担当者に報告し、その後の指示を受ける。
第6条 (ウイルス対策)
 ファイルが添付された送信者の不明な電子メールは、開封せずに削除すること
 送信者が確認できた場合でも、電子メールの添付ファイルは開封前に必ずウイルスチェックを行なうこと
 ウイルス検知ソフトが反応した場合には、速やかにシステム管理担当者にその旨を報告し、その後の指示を受けること
第7条 (社内機密情報の取扱い)
 会社の機密情報を電子メール等を用いて漏洩してはならない。
 添付ファイルの送信は、上司からの内容の許可を得ること
第8条 (著作権)
 第三者のコンテンツを無許可でコピーして電子メールで送信することは違法行為となる危険性があるため行なってはならない。ただし、事前に作成者に了解を取ってある場合を除く。
第9条 (罰則)
 この規程に違反した場合、別途定める罰則規程に基づき処分されるもとのする。
付則  この規程は、平成12年12月1日より施行する。




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