旭屋出版MOOK「すしの雑誌」(近代食堂別冊)
 第24集 2001年2月号 P213掲載


 
  経営コンサルタント
  中小企業診断士
  福江 誠



成長店レベルの経営指針




 成長店と繁盛店の違いはどこにあるのだろうか。
 成長店となるには、ある程度繁盛しているだけでなく、多店舗化できるだけの作業の標準化が図れること。そして、投資の効率性、すなわち投資の回収が早いことが要求されてくる。
 腕利きの職人がいるから繁盛しているとか、お客に利益還元した結果繁盛はしているが、残る利益はオーナーの生活を維持するのがやっとというような収益性の低い店では、繁盛店であっても成長店とはなり得ない。
 飲食業のなかでもすし店が成長店となりにくいのは、他業種ほどコックレス化が進んでいないため職人の固定化的人件費の割合が高いことが主な要因であると言われている。  果たして、そうだろうか。前掲の人件費比率の目標値に掲げた数値は、実際の収益性の高い成長企業の店舗実績を参考にした数値である。何が実例店と大きく違うかと言えば、次々と新しい店舗を出店していくために、職人の平均年齢が低く、店舗レイアウトも作業効率と客席効率の高いものになっているからである。
 したがって、人件費の改善は、当面はゆるやかな改善を目指すとして、既存店舗の収益性・生産性をベースにした場合の店舗段階利益の目標数値、そして店舗投資額と売上高の倍率を示す投下資本回転率の目標数値をまとめたのが、表4である。
 成長店となるための指標は、投資効率と店舗収益性の両面から検討されなくてはならず、投下資本利益率(公式12参照)30%を目標とした。
 投下資本利益率30%を目標として計算してみよう。
 回転ずし店の店舗段階利益率を10%、投資額を8,000万円とした場合、年間必要売上高=30%÷10%×8,000万円=2億4,000万円となる。同じく、回転ずし店の店舗段階利益率を10%、投資額を1億2,000万円とした場合は、
 年間必要売上高=30%÷10%×1億2,000万円=3億6,000万円
となる。
 また、すし和食店の店舗段階利益率20%、投資額を8,000万円とした場合は、
 年間必要売上高=30%÷20%×8,000万円=1億2,000万円
となる。
 このように、業態によっても売上高目標は大きく違ってくるが、店舗段階利益の水準は、儲かる仕組みがいまの時代にマッチしているかどうかに関わっている。投資の成否は、店舗の収益性の変化以上に、企業のスピードを左右してくる。
 2階建てで1階がカウンター、2階が座敷きになっているようなすし店は多いが、これをワン・フロアにした場合のオペレーション・コストはいくら下げられるのか、若い人たちに受ける店舗空間、レイアウトによりどれだけの規模が必要になり、坪当たりいくらの内装費用がかかるのか等々、投資と店舗収益性の両面から検討していかなくてはならない。
 以上、すし和食店、立ち店、回転ずし店の3業態の数値を比較検討してきた。数字と言うものは、確かにその時点での店の経営努力の結果を端的に表してはいる。しかし、その数字は絶対的なものではない。あくまでもその時点での結果であり、今後の店の繁盛いかんによって変わってくるのは言うまでもない。ただ、勘に頼った経営の仕方では、ますます厳しくなっていることは認識してほしい。
 望ましい経営管理の第1歩は、結果として利益が出たというのではなく、目標とする利益を獲得するために、売上高、原価、経費を管理することである。そのことをよく理解していただきたい。



表4
 事例店の投下資本回転率と
        店舗段階利益率(目標値)

  投下資本回転率 店舗段階利益率
回転ずし店 3回転 10%
すし和食店 1.5回転 20%
立ち店 2回転 15%
  福江 誠氏
(株)TKCにてフランチャイズチェーン、中小企業の財務システム開発の後、(株)会社業務研究所に勤務。「すし和食店研究会」代表補佐として会員すし店の経営顧問、相談、セミナーに従事。現在、出前パーティーネット代表、すし和食店経営研究会客員コンサルタント。
 

Copyright(C) 2001 福江 誠



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