旭屋出版MOOK「すしの雑誌」(近代食堂別冊)
 第24集 2001年2月号 P213掲載


 
  経営コンサルタント
  中小企業診断士
  福江 誠



  店舗計数管理のチェックポイント


   このような条件のもとで利益を出していくには、日々の売上予測に基づくコスト・コントロールを実行しなければ、売上は増えても利益は残らないということになりかねない。以下、重点管理の必要な売上高管理、原価管理、人件費管理と店舗における利益管理のポイントを述べる。

 
  ■売上高管理
 毎月の売上高目標を設定して達成度を算出しても、未達成の結果を嘆くだけでは何も改善されない。
 最終的にいくらの利益を出すかに重点を置くなら、売上高の変化を読み取り、次月以降の対策を立て、売上予測がきちんと行えることの方がより重要である。そのためには、売上高の分析は時間帯別曜日別などに分解して算出し、目標の設定に役立つ資料となっていなければならない。具体的には、時間的、時間帯別、曜日別に客数、客単価の推移を分析し予測する。
・商品部門別(すし、一品料理、ドリンクなど)の部門構成比と数量の分析
・売り場部門別(出前と店内売上の区分、テーブル席・カウンター席の客席別)の分析
 事例店のすし和食店ではディナー帯の客単価4,988円、出前の比率が14%と店内売りが中心で、中級クラスの価格帯の店であることがわかる。
 立ち店はディナー帯の客単価3,734円、出前比率12%と大衆的クラスの店。
 回転ずしはディナー帯1,723円と、グルメ型タイプのなかでもややグレードが高い。
 また、客席回転率、坪売上高については、立ち店、回転ずしともに高い水準である。前述したFLコストが高いというすし店のハンディは、この「客単価の高さ」と「客回転率の高さ」を両立させることによって解消されるのである。


 
  ■原価管理
 食材の加工度が低く、鮮魚を扱うすし店の原価管理は、季節による仕入れ変動、鮮度劣化によるロスの発生など非常にむずかしい面もあるが、集客力を左右する重要な要素であるとともに、業態の特性もはっきり数値として表れるのが、この原価である。
 これは、すしの売価設定、すしの売上比率の違いが表されていると見ていい。
 事例店の回転ずし店の原価率50.2%は、最近のこの業態としては標準的な数値である。立ち店も44.8%と上昇傾向にある。
 すし和食店が41.8%と一番低いのは、和食の一品料理が売上に占める割合が高いからだと考えられる。
 以上の比較から推察されるのは回転ずし店だけでなく、立ち店についても繁盛を維持していくためには原価率は相当高くなっているということである。これだけの原価をかけるのがむずかしいという小規模店は、客単価5,000円以上。前記の原価率と人件費率を合わせたFLコストは、いずれの店も72%に達している。
 特に、回転ずし店の場合は原価率が高いため、売上の変動に合わせた人件費コントロールができるかどうかが店舗の存続に関わってくる重要な管理項目である。
 そのためのモノサシとなるのが、「人時売上高」と「労働分配率」である。
 人時売上高は、正社員からパート・アルバイトの人にいたるまでの生産性を表す、一人一時間当たりの売上高を示す。事例店の3業種とも、人時売上高は5,000円を超えており、一般の飲食店の基準からいえば、一応は合格点ではある。ただし、すし和食店と立ち店は、労働分配率が50%を超えており、一人当たりの平均給与を下げざるを得ない水準と言える。
 若手のすし調理師の採用・育成によって早期の戦力化を図るか、パート・アルバイトのシフト・コントロールを日々の売上に合わせてよりきめ細かく行なう必要がある。
 特に後者に関しては、売上予測を間違えば、販売機会のロスまたは人件費ロスが発生することになりやすい。それだけに前述したようなさまざまな角度からの売上高の分析が欠かせないのである。


 
  ■店舗管理可能利益
 店舗段階利益

 粗利益高から人件費、水道光熱費、消耗品費、販促費などの諸経費を差し引いた利益が「店舗管理可能利益」で、店長の管理責任となる利益である。  事例店の数値では、すし和食店が約19%、立ち店で約21%、回転ずし店で21%弱となっている。決して高い水準とは言えないが、まあまあの線である。  この店舗管理可能利益から初期条件を差し引いた利益が「店舗段階利益」であり、その店舗が直接生み出している利益である。  初期条件とは、地代家賃・リース料・減価償却費の三つの経費を指し、オープン時の投資額、出店場所の契約条件によって発生する固定経費である。  事例のすし和食店、立ち店の場合はすでに開店から10年以上経過しているため、この部分の経費負担は非常に軽くなっている。一方の回転ずし店では8%と3業態のなかでもっとも高く、リース料・減価償却費など1億円を超える出店投資額が毎月の経費として負担される。


 


  公式1
   売上高=客数×客単価


  公式2
   坪売上高=売上高÷店舗坪数


  公式3
   客席回転率=客数(一日平均)÷客席数


  公式4
   原価率=(月初在庫高+当月仕入れ高
     −月末在庫高)÷売上高


  公式5
   人件費率=人件費÷売上高


  公式6
   FLコスト(比率)=原価率+人件費率


  公式7
   人時売上高=売上高÷総労働時間


  公式8
   労働分配率=人件費÷粗利益高










 







 











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