昔の「福利厚生」が今は「経営目的」達成の「仕掛け」役
組織内にメリハリと緊張感を生む社内行事&セレモニーの考え方と運営法
 


2. こんなやり方もある−業務改革の成果発表と取引先にノウハウ提供の研修で収益に貢献の実例2−トヨタ工機(株)

 もう1つの実例として、トヨタ工機(株)(創業1955年、本社東京、資本金5300万円、従業員数107名、代表取締役・豊田実氏)という会社があります。「コンクリート二次製品製造用型枠及び製造設備」を手がけている会社です。同社は、「トータル・プロダクティビテイ・マネジメント(TPM)」という技法で、「TPM奨励賞」を中小企業ではじめて受賞した会社です。トヨタ自動車とは全く関係のない会社ですが、この会社もまた素晴らしいのです。


(1) 経営理念

 まず、経営理念が実に明確になっていて、その経営理念が従業員全体に行き渡り、若い従業員まで本当に信頼しているのです。それは、かなり以前に経営理念として流行った言葉で、聖徳太子の「和を以って貴しと為す」です。今は、「『和』などというものを中心にしてはいけない。『和』は乱れ、混乱することから新しい時代を生み出していくのだ」という考えですが、同社は全く違い、「人が仲良くして、どこがいけないのか」というのです。
 同社の社長の考え方は、「自分自身が変わる→人間として成長する→自分が幸せになる→家庭が良くなる→周囲の人たちも幸せになる」ということで、「自分が変われば周囲も良くなる」ということになり、「仕事は、多くの時間を費やしている仕事に対する意識の持ち方を変えたら→トラブルや問題は自分の成長に欠くことのできない現象→そうすると役に立ちたい、という考え方が生まれる→そして自分の役割を自覚して生き甲斐を持って仕事をするようになる」というサイクルになり、会社が変わる、というわけです。
 そして、これを行なうにあたって、人の責任にしない、事実を見つめ率先垂範することを条件に、「体質を変えよう」「業績を上げよう」としたのです。売上、利益率の向上、サービス競争力の向上、コストダウンなどの目標を具体的に事業所別に立て、さらに職場別に目標を立てています。これによって、自分の職場で自分が個々にどうかかわっているかという、会社の中での仕事の役割がわかるわけです。これが、同社の掲げる「和」なのです。
 そして、企業自身の利害を超えた「共創」をめざした企業、「生命」を生かすという視点に立って、人間と社会を啓蒙し、自然の秩序維持に貢献する企業をめざしています。
 


(2) TOP活動発表会  
 
【資料3】
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   同社の従業員の燃えている様子がわかる年1回のTP活動は、「TPO活動」として(TPでOnenessになる・TPで大和(だいわ)を実現させる・TPでTOPをめざす)以下のように各事業部門ごとに行われます。原則として、全社員が集結します。工場は、福島・東京・吉野ヶ里と3カ所あります。97年に導入されたこのTP活動は、3年ほどですっかり従業員の自主的な活動に定着しました。生産部、製造部、工事部はもちろんのこと、営業部、総務部、型枠設計、機械設計、生産管理部門まで行なわれます。各事業部門のテーマは、経営方針、経営計画から選定されます。しかも、「自部門の体質改革」と「業績向上」の二つの面から取り上げられます。発表は、テーマ選定の理由、目標数値、実績と推移、TP活動の経過、今期できたこと、今期できつつあること、これからの課題、と新入社員も発表します。
 例えば、生産部の発表では、「基準人工達成率の向上の改善事例」が取り上げられました。成果は次の通りでした。
 
 

1. 基準人工達成率が前期より9%向上した。(実績)

2. 他部門との連携した活動ができた。(体質)

3. 負荷対応力が向上した。(実績)

4. 部門内の活性化が図られた。(体質)

5. 1人ひとりの自立心が向上した。(体質)


 
   このように、他部門からの意見を取り入れ、部門を越えたP・D・C・Aを回している従業員の生き生きとしたTP活動の成果発表の後、最後は社長賞などの表彰で締めくくられます。
 


(3) 宿泊研修棟に取引先を招いて研修会開催

 この時期に、吉野ヶ里工場(九州)に総木造建ての休憩室(リフレッシュ・ルーム)と宿泊研修棟(2階建て。延べ床面積1,037m2)を建築して、日経「ニューオフィス賞」を受賞し話題を集めたのも、同社です。社長の豊田実氏は、「もっと業績が悪化していたら、この決断はできなかった」と心中を述べてくれました。社長の中期経営計画には「働き甲斐のある職場づくり」がありました。労働条件の改革などは、手掛けてきています。そして、仕事をする人たちに、「仕事に携わる意義、喜び」なども伝え続けてきました。次に、作業休憩では、心身ともにリフレッシュのできる施設があってこそ、計画の仕上げが可能だったのです。さらに、この宿泊研修棟は、社外の方々にも開放し、地域の方々にも利用していただくことも考えているそうです。
 同社は、お客様のために独自に「コンクリート二次製品・製造プログラム」を作成して、関係会社に「研修」をご一緒にやりましょう、と声をかけたのです。世間には、多くの公開セミナーがありますが、「コンクリート二次製品製造」という専門のプログラムがありません。生産理論をバックにして実際の数値や改革体験を学べるプログラムは、大好評となったのです。トヨタ工機との取引のなかった企業も、その話を聞いて参加してきました。このプログラムには、トヨタ工機の「製作現場の視察」という項目もあります。参加者は、「コンクリート二次製品の金型」がどのようにして作られるのか、その設計の特徴から品質管理等々について知ることになります。「トヨタ工機の金型が他社と比較すると高いとは聞いていたが、これだけの品質で耐用年数も長いとなると、同社の良い製品を購入した方が得策かも知れない」という声も上がりました。また社員も、外部のお得意先の目を常に意識することにもなり、一石二鳥の効果を得られたのです。
 従来であったら、福利厚生的な課題に終わるものを、環境の変化に呼応して、「目的」を再検討し、「手段」のあり方を変えたのが、以上の2社の例です。これが、「制度」を有効にして「経営」目的を達成する、いわば「仕掛け」の例です。皆様方の厳しい経営環境の荒波を乗り越えていくヒントになれば、と思います。
 

Copyright(C) 2003 渡辺英幸



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