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「新しい時代の「開店・出店」成功の秘訣−すし店」 - 福江誠 執筆
 「飲食店の成功する 独立・開店」
    − 旭屋出版MOOK 第1集2000年9月発売号 掲載
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●業界の現状

 現在の日本のすし市場は、統計では約1兆5千億円で、ここ数年横ばいもしくは微減の状況が続いています。
これは、外食市場全体の約5%に相当しますが、このほかにスーパーやチェーンの持ち帰り店、宅配専門店などの中食市場5千億円を加えると、合計2兆円という大きな市場規模になります。
 飲食市場の中にも出前や持ち帰りの売上が含まれていますので、筆者がそれぞれ分析・整理すると2兆円のうち、すし専門店(店内)が35%、回転ずし店(店内)20%、出前・デリバリー店25%、持ち帰り店20%という比率になるものと思われます。
 これから開業しようとする人にとって、この数字が何を意味するのかというと、すし店の商売といってもさまざまな売り方があるンいうことです。
 これからのすし店の商売は、変化の時代にあって、国民に根強い人気があり、強い商品力であるすしを「どんな工夫をして売るか」が問われてくることになります。


●業態別の成功ポイント

 すし店を開業するに当たって、まず検討しなければならないことは、用意できる資金、出店できる店舗物件の二つの条件からどのような売り方ができるのか、つまり業態が可能なのかを考えてみることです。
高級店で修業していたからといって、住宅街で同じような形態の店をつくっても商圏の客層には合いません。
そこで、主な業態別、立地別にその特徴と成功のポイントを検討してみましょう。



■江戸前ずしカウンター店

 すしを店内中心に売りたいという人は、カウンターでの魅力づけができないと回転ずし店との差別化がむずかしいでしょう。
 しかし、この業態は客単価が取れて、客席回転もいいので、成功すればほかの業態にない強い経営効率を発揮できます。
立ちの繁盛店は、すしダネのアイテム数が多いこと、1カン50円から400円の価格帯で価格を明示することが、もっとも重視されなければならないポイントです。
 上等の大トロを置きたいからとわざわざ価格の上限を1カン1000円などにするのは、かえって価格イメージを分散させることになります。また、すしダネのお好みアイテムで40種類以上揃えられるくらいでないと、専門店としての魅力を打ち出すことはむずかしいでしょう。
よほどの高級店をつくるのでなければ、商品・タネの回転・客の回転による鮮度の維持と品揃えを両立させることが、回転ずし同様に重要なのです。
 20-25坪の店舗でカウンター中心の売り方ができるのであれば、ぜひ取り組んでいただきたいすし店の王道です。



立ちのすし店は明るい雰囲気と価格の明朗さが、開店ずし店は競合が激しいだけに、他店との差別化の工夫がポイントに。

■すし和食店

 現代では、酒とすし、そして一品料理もいっしょに楽しみたいという人が増えてきています。
繁華街立地の店ならば、すし居酒屋タイプの品揃えをし、テーブル席や掘ごたつの席を配した居心地のいい空間の演出が求められます。
 また、立ち店のように高い客席回転はのぞめませんから、ある程度の席数を確保する必要があります。
40坪以上のスペースがのぞましいでしょう。
 住宅街、ロードサイド立地でもすし版ファミリーレストランのようなタイプは、今後増えてくるものと思われます。
すし居酒屋的なメニューは必要になりますが、家族での来店利用も狙えるセットメニューや子ども向けメニューなども加えたいものです。
 煮物、焼き物、揚げ物といった一通りの調理技術を生かしたすしと和食のバランスが成功のカギを握ります。
ファミリーで回転ずし店に来ている層の何割かは、こうした形態の店に流れてくることが十分に期待できます。




すし以外に煮物や焼き物などの一品料理を充実させたすし和食店は、今後ますます延びる業態。

宅配すし店

 独立開業を目指す人にとって、もっとも小資本で始めらるのが宅配すし店です。
フランチャイズ・チェーンに加盟するという選択肢もあります。
 宅配すし店は、片道10分で配達できるシステムをいかにしてつくり上げるかが、成功の80%を握っているといっても過言ではないでしょう。週末のピーク時においても、調理から配達までを時間通りに届けられるシステムを確立することが、いまだに既存のすし店が真似のできない強みなのです。
 一定のリピーターが確保できるまでは、とにかく入念な販促計画を立て、さらに配達担当者のアルバイトに接客のトレーニングを行うことが、競争に勝つ条件になってきます。




宅配を専門にするすし業態は、配達の迅速化、時間の正確さが実現できるシステムが重要に。

■回転すし店

 回転すし店は、低価格店とグルメ型店との二極化の流れがはっきりとしてきました。
 低価格均一店を成功させるにはかなりの仕入れ力と資本力が必要となり、今後の新規参入としてはおすすめできません。
 一方のグルメ型店は、やはり競争が激しくなってきており、店舗投資も1店舗で1億円近い投資が必要になりますが、差別化による成功はまだまだ可能です。
 商品の差別化では、ボリュームだけでなく、他店にはない差別化商品、冷凍品だけでなく店舗で鮮魚をさばけるスタッフなど、手間をかけた商品づくりと、最低でも45%以上の原価率をかけなければ繁盛店とはなりえません。



■持ち帰りすし店

 小資本で始められる業態ですが立地に左右され、寡占化も進んでいます。
 出店立地も従来の駅前立地から食品スーパーなどの鮮魚売り場にシフトしてきており、住宅地では宅配すし店に押され気味です。
持ち帰りのすし店をやるのであれば、惣菜なども取り入れて商品アイテムの幅を広げるか、宅配との複合形態を取るか、あるいは家庭での来客時のニーズにも応えられる本格的な商品構成が売れるような立地を選択することです。
 駐車場を併設することによって宅配すし店以上に高い収益性を確保している例もあるので、自家用車保有率の高い地域ではまだまだ成功の可能性はあります。


持ち帰りのすし店は小資本での開業が魅力だが、立地の選定や宅配との複合業態を考えたい。



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