「配置・異動、出向等に関する条文の作り方」

●配置や異動については原則会社に裁量権がある

採用した人を、どのような職場や職種に配置するかは、採用時に特別な約束がない限り、会社にその裁量権があります。
これは異動についても同様です。したがって、会社は業務の必要に応じて、職場や職種の変更・転勤等の人事異動を行うことができます。
異動を命じられた社員は、基本的にはこの異動命令を拒否することはできません。ただし、採用時に特別な約束をした場合は別です。日本の企業では、職場や職種を限定して採用することはまれですが、もし採用時にそのような特約をしたならば、これに拘束されることになります。
この場合には、本人の承諾がなければ会社の異動命令は無効ということになるでしょう。


●出向や転籍については本人の承諾を必要とする>

職場や職種の異動は、基本的には社内的なものといえるでしょう。
社員本人にかかる負担もそれほど大きくはありません。このようなことから、特別な約束がなければ会社が自由に異動を命じることができると考えられます。 しかし、同じ異動でも出向や転籍となると話は別です。
これらは、社内的な異動とは異なります。社員本人にかかる精神的、経済的負担は相対的に重いといえるでしょう。
そのため、出向や転籍を命じるためには本人の承諾を必要とします。
これは、「使用者は労務者の承諾あるにあらざれば、その権利を第三者に譲渡することを得ず」という民法第625条1項の規定によるものです。


●本人の承諾を得る方法

出向や転籍を命令するためには、本人の承諾が必要な訳ですが、それではどのような方法で承諾を得るべきでしょうか。
基本的には、その都度個別に承諾を得るということなるのでしょうが、これは出向の数が多いと大変です。そこで、一般的には就業規則の中に出向の規定を定め、これにより入社時に承諾があったものとして取り扱うことがよく行われています。
就業規則に規定された出向の条文を根拠として出向を命じるという訳です。
ただ、就業規則では「業務の都合により出向を命じることがある」といった簡単なものがほとんどでしょう。
これでは出向の内容がよく分かりませんので、出向を命じられた社員との間でトラブルが生じないとも限りません。
これを防止するためには、就業規則の条文とは別に出向に関する詳細な内容を定めた出向規定を作成しておくべきでしょう。
このように、出向の場合には就業規則の中に規定するとともに出向規定を別途作成しておけば、個別の承諾を得なくても出向を命じることができると考えられます。しかし、転籍はいったん転籍元を退職することになる訳ですから、社員本人への影響は出向よりも更に大きなものになるといえるでしょう。
そのため、就業規則の条文や転籍規定だけでは転籍を命じることはできません。
就業規則の規定や転籍規定の有無にかかわらずその都度、個別に社員の承諾を得ておかなければならないということになります。

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